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1級建築士試験【製図試験】時間短縮のための9つのコツ

2017-07-09 by i-korih コメントを書く

平成30年製図試験課題『健康づくりのためのスポーツ施設』

令和元年の製図試験が7/26に発表された。

『美術館の文館』という課題。「分館」という点が非常に面白く、時代を反映しているとおもう。

昨今、スクラップ&ビルドの風潮が弱まり、既存ストックを有効活用した提案が増えてきている。美術館は社会要求に応えることとが重要で、なおかつ収蔵スペースの拡張など現実的な建築計画の更新も求められる。そういう点で、昨今、世間の多くの美術館が高齢になってきている中で、社会的需要が高まっている施設と言える。

まず、「分館」ということで、「本館との関係性」の読み解きが要求されるのではないか。おそらく配置計画や動線計画が重要になることに加え、増築の際の法規の整理、構造の整合も重要になってくると思われる。

また、要求図書に屋上庭園とあり、大きな面積が必要となり、動線の整理や一体で計画する施設などプランニングの腕が要求される。また3階平面図も要求されていることから、3層構成となる際の、竪穴区画の形成なども注意点となる。

具体的には製図課題をこなす中で、それぞれの項目について習得していただきたいが、この記事では、製図試験を効率的にこなしていくテクニックを余すことなく記しておいた。長くなるが、少しでも合理的に試験に臨みたい方は、是非一読いただきたい。

1級建築士 製図試験のポイントを書くにあたり

前回、『1級建築士【学科試験】合格のための勉強法』の中で書いたが、学科はパスするまでに2年かかり、実は製図試験も2年かかった。1年目は、某S学院に高い授業料を払って出席し、なおかつ毎週土日を削ってまで訓練を重ねたにも関わらず、階段の位置を基準階と低層階で書き間違えるという痛恨のミスを犯し、あえなく撃沈。ケアレスミスと言ってしまえばそれまでだが、1年を背負うには痛すぎる敗戦だった。

しかし結果として2年間製図試験を勉強することとなり、それなりのノウハウが身についたかと思う。(それが人生としてプラスであったかはわからないが…)

この場では、僕のような犠牲者を出さないよう、資格学校では教えてくれない、製図試験での大事なことを余すことなく書いていきたいと思う。長くなるが、お付き合いいただきたい。

製図試験はパズル

製図試験は、建築のパズルのようなものである。ただし正解は幾通りもある。

敷地の条件、建物の要求条件が与えられ、その条件を可能な限りすべて実現する。解答にデザインなどは一切問われず、問題条件にいかに合致しているかどうかが採点基準になる。つまり与えられたピースをはめ込んでいくパズルといえるが、さすがに単純なパズルとは違い、設計におけるバックグラウンドを理解した上でのパズルになる。バックグラウンドとは具体的に言うと、下記の5点が主な内容だと思う。

  1. 課題となる用途の建築計画
  2. 建築設計における作法
  3. 設備計画の要点
  4. 構造計画の要点
  5. 建築関連法令(建築基準法、バリアフリー法等)

課題となる用途の建築計画

課題となる用途については、多くの場合、時世で話題になっている建物用途が問題として取り上げられやすい。規模としては、2000~3000㎡程度のことが多く、基準階型とそうでないものに大別できる。ゾーニング・動線計画をしっかりと計画するためには建築計画の要点を押さえることが必須だが、要点を押さえるには手間と労力ががかかるため、多くの人が資格学校に通い、学校側がまとめた資料を元に学習する。

建築設計における作法

例えば階段の書き方、エレベーターのサイズ、トイレ内のプランニング等、設計をする上での一般常識である。建築設計を生業にしている人は、こういったものの作図は慣れているし、また作図時にちょっとした気配りができるものである。一方で、普段設計に携わっていない人は、これらの内容も1から勉強しなければならないため、やはり資格学校で教わるノウハウが大いに役にたつ。

設備計画の要点、 構造計画の要点

設備・構造は真面目に勉強すると、とても奥が深いので、到底試験勉強でマスターできる代物ではない。しかし試験でもそのあたりは考慮されており、本当に基礎的な内容しか出題には含まれない。設備で言えば、空調のパッケージエアコンとダクト接続型、構造で言えばラーメン構造などの基礎知識があれば、それなりに対応できるようになる。学校に通った場合はこういった表層的な内容がテキストでまとまっており、数ページ暗記すれば、試験対策の知識がつくようになっている。

建築関連法令(建築基準法、バリアフリー法等)

法規について、実は、試験での出題は必ずしも建築基準法にすべてのっとているわけではない。例えば面積の計り方などは、基準法によらず、試験文のなかで指定されることが多い。基準法として押さえておくべき内容は下記の内容程度かと思われる。

  • 防火区画:特に竪穴区画、時に異種用途区画。面積区画は1フロアの面積が小さいため、竪穴区画をとっていれば、問題にならない。
  • 避難距離:多くの場合、歩行距離、重複距離の記載が指示される。
  • 採光:詳細な採光計算は求められないが、無窓・有窓の違いは意識しておくべき。(避難距離に影響)

その他、階段の寸法やバリアフリー法など、上げれば諸々の抑えは必要だが、大きく意識すべきは上記が主である。学校では、これらの内容は学科でマスターしているという前提で授業が進むことが多い。講義の議題として取り上げられるというよりは、課題の添削の中で確認されることになる。

資格学校には通うべきか

以上を踏まえ、製図試験については学校に通った方が確実に楽というのが僕の見解だ。普段から設計に携わっている人は、学校に通わずとも合格できる可能性は十分にある。しかし、それでも前述の1・3・4の項目などは、独学での勉強は手間がかかるため、資金に余裕があり時間を有効活用したいのならば、学校へ通うことをお勧めする。

僕はというと、製図試験に2回挑み、S学校とT学校(通信)に通った経験がある。S学校は資金が多くかかるが、資料や授業は手厚い。T学校(通信)はビデオ授業と課題が配られるだけだが、必要な情報はきっちり網羅されていると感じた。

課題の難易度と量はS学校のほうが高いが、試験の難易度を考えるに、そこまでの準備は必要ないとも感じた。結論として、コストパフォーマンスを考えるのであればT学校(お勧めは通信)のほうがよいと思う。さらに、S学校は授業自体で丸一日かかり、宿題の時間も考慮すると週の2日を費やさなければいけない。通信学校であれば、講義は通勤時間にスマホで見ることもできるため、時間の有効活用も可能である。また通信学校であれば製図は基本的に自宅で行うため、重い製図版を運んで学校に行く必要もない。ただし、家で製図する際、ついついサボってしまうなどモチベーションがあがらない人は要注意であるが。

さて今回、この記事でお伝えする内容は学校でもなかなか教えてくれない具体的な製図手順のマニュアルである。この製図手順については僕が独自で考えたものもあるが、自身で実践してきたことを根拠に、それなりの自信をもって発信する。

初めて僕が製図に取り組んだ際は、4~5時間程度の時間を要したが、マニュアルを構築し実践していく中で、最終的には、最短で2時間30分程度で描けるようになった。

製図手順や、効率化については意外と資格学校で教わらないことが多い。ここで書くことが、少しでも製図試験の効率化につながればと思う。

製図時間を圧倒的に短縮するアイテム

製図道具は最小限に抑え、それぞれの性能がよいものを選ぶ

製図の練習を始める前に、まずはアイテムをそろえる。

試験に臨む上で、アイテム選びは重要だ。アイテムの選び方が製図時間の短縮に直結する。

アイテムを選ぶ基準は、

  • できるだけアイテムは少なくする。
  • 使い勝手のよいものを選ぶ

この2点が重要だ。

製図の際には、ものを持ち変える時間も意外とバカにならない。持ち変える回数を減らすことは時間短縮につながる。したがって出来るだけ少ないアイテムで済ませることが効率化にダイレクトにつながる。

製図板

まずは製図板。製図板は「(財)建築技術教育普及センター」より、持ち込み可能な仕様が定められているので注意が必要だ。

僕のお勧めはこちら

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定番だが、コンパクトで平行定規の移動もスムーズにできる。また学校に通う人は、毎週この大きな製図版を持ち運ばなければいけないため、ケースもしっかりしたものにこだわりたい。

シャープペンシル

続いてシャーペン。シャーペンは個人の好みがあるが、僕はの0.3㎜、0.7㎜、とステッドラーの0.9㎜を使い分けていた。ロットリングは適度な重みがあり、持ち心地・書き心地共によい。個人的にはデザインもロットリングが一番かっこいい。

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本当は0.9mmもロットリングでそろえたかったが、残念ながらロットリングは0.9mmがなかったのでステッドラーとした。ちなみに0.3㎜はブラックとシルバーの2色があるが、0.7mmとパッと見で違いが判断できるようシルバーとするのがよいだろう。

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3種の太さの図面上での使い分けは、次のようにする。

  • 0.3㎜ → 植栽、細かい文字、添景等の書き込み、サッシュの見えがかりの線
  • 0.7㎜ → 壁、ガラス、階段等、主要な躯体線
  • 0.9㎜ → 柱型

線の太さを変えることで、図面にメリハリが生まれ印象が良くなる。またシャーペンを持ち替え回数が少なくなるよう、作図フェーズとシャーペンの持ち替えタイミングが合うように線種の使い分けを考える。

またA3の記述を書く際に製図用のシャーペンを使うと、けっこう手が痛くなる。ここは、「Dr.Grip」のような、書きやすいものを使うのが賢明だ。

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定規

続けて定規。

まず、三角定規はテンプレート一体型のものを使う。おすすめはズバリ、「バンコ 三角定規45°テンプレートプラス」である。最もお勧めしたい製図道具だ。

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これを使うか使わないかでは、スピードが全然違う。一体型とすることで、テンプレ―トの持ち替え手間を省略できる。ちなみに後の『エスキスは正しい手順で最小限の手数で』で記述しているが机や椅子の添景はテンプレートなどは使用せず、手書きで書くのが最も効率的である。バンコを使うのは柱を描く際に限る。

次にスケールだが、三角スケールは勝手が悪いため使わない。おすすめはヘキサスケールである。僕は「ドラパス ヘキサスケール 一般用 15cm 」を使用していた。

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ヘキサスケールを使う理由は2点ある。

  • 3角スケールは、1/200、1/400のスケールを探すのに時間がかかる。ヘキサスケールであれば、平面上でスケールが判断できるが、3角スケールはイチイチくるくる回さなければならない。
  • ヘキサスケールは普通の定規としても使える。後述するが、細かい壁やガラスの線を引く際にいちいち平行定規などは使わない。15cm程度の定規がハンドリングがよく使いやすい。

消しゴム

次に消しゴム。消しゴムは、正直、選ぶもので差が出にくいが、強いておすすめをいえば、薄型の消しゴム「トンボ鉛筆 消しゴム モノスマート」がよい。

細部を消す際にはホルダー型の「トンボ鉛筆 ホルダー型消しゴム モノゼロ 角型 EH-KUS11 ブラック」などがよい。しかし、一番のベストはシャーペンの頭についている消しゴムを使うことである。理由はこれまで同様、道具の持ち替えをしなくて済むからである。

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エスキス用の道具

製図の際の道具は以上だが、エスキスの際は消える蛍光ペンを使うことをおすすめする。

問題文は、ピンク、黄色、緑色と3色のペンを用意する。

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またエスキス用には、0.5mm程度のフリクションペンを使うと、度重なる書き直しにもある程度耐えられる。

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以上、アイテム選びについて書いてきたが、どうだったろうか。あくまで筆者目線でのおすすめを記したが、これらを参考に課題演習前には、ばっちり製図用具を整えよう。

製図試験における理想的な6時間30分の使い方

時間配分は課題読解とエスキスに最も重みを置く

1級建築士の製図試験は、6時間30分の試験時間で行われる。提出物は、記述文(A3用紙)および製図(A2用紙)がそれぞれ1枚である。

6時間半の時間をどのように使い提出物を仕上げるかは、個々人の自由になるが、一般的に学校等で教わるタイムスケジュールは以下のような流れとなる。

  • 2時間:問題文の読解および計画のエスキス
  • 1時間:記述
  • 3時間:作図
  • 30分 :全体の見直し・細部の書き込み

上記のうち、記述の時間を1時間から大きく縮めることは至難の業だ。解答が反射的に頭に浮かび、文字を書くのが早い人でも、50分で書き終えれば十分に早いほうだ。

一方で、エスキスと作図の時間は工夫次第で時間短縮が可能だ。

エスキスと作図のいずれも短い時間で完了できるとした場合に、時間をかけるべきはエスキスだ。なぜなら1級建築士の試験は、図面の綺麗さや書き込みの量に比べ、課題文への適合性が最も採点基準として重要視されるからである。

例えば作図が2時間45分で書ければ、その15分をエスキスに充てることができる。2時間30で作図が完了できれば、エスキス全体で2時間30分の時間を費やすことができ、2時間30分エスキスに時間がかけられると、仮にエスキスの最中に1プランのグリット割が適切でないことに気づいた場合などにやり直しができる。やり直しが効くというのは、エスキスを進めていく上での、心の余裕が大きく違ってくる。

時間をかけるべきはエスキスであり、縮めるべきは作図時間ということだ。

さらなるエスキス時間の細分化

エスキスに最大限の時間を費やせるとして、その2時間30分の内訳を説明する。

まず課題文は30分かけて読解する。よく課題文は20分で読む、という指導を耳にするが、ここは意識的に時間をかけてよいところだ。

課題文は試験開始時に2度読む。繰り返しになるが、製図試験は課題文を忠実に再現することが最も重要なので、課題文は読み漏らしがなく、かつ中盤・終盤でエスキスや図面をチェックする際に必要な情報が読みやすいよう、適切にマーキングをする。

課題文の読解が完了したら最大で1時間45分かけてエスキスを行う。エスキスが完了した際、課題文の赤マーカー部のチェックを行う。プランをすべて作図し終えた後では、重大なミスの修正ができないため、エスキス完了時にゾーニングや室の要求事項に欠落がないか、15分かけてチェックをする。

以上を踏まえた、理想的なタイムスケジュールは、以下の通り。

  • 30分:問題分の読解
  • 1時間45分:平面計画のエスキス
  • 15分:プランニングの見直し
  • 1時間:記述
  • 2時間30分:作図
  • 30分:全体の見直し・細部の書き込み。

大まかなタイムスケジュールはわかっただろうか。ここで、読者の多くの皆様が、「作図2時間30分」に対し、大きな疑問を持つだろう。それを限りなく実現させるために、作図時間のより詳細の行程を後に記している。

タイムスケジュールは自身で構築すべき

最後に最も大事なことを記す。

今後、学校等で配布される課題文を行うときは必ず時間を測ること。時間を測ることで、どの項目に時間がかかっているのか、自分の弱点が何なのか、客観的な判断ができるようになる。客観的な指標により、局所的な訓練を行うことができ、効率的に学習を進められるし、本番では感覚的に時間管理ができるようになる。

そして自分なりのタイムスケジュールを構築することが可能となる。上では具体的な時間配分を記載したが、すべての人が必ずしも上記のタイムスケジュールで製図を行う必要はない。個々人の能力に合った時間配分を見つけることが、最終的には最も重要である。そのためには、毎回時間を計った上での繰り返しの訓練を行うことが不可欠である。

課題文をチェックリストに変えるマーキング

最も重要なことは課題文を適切に読み解くこと

1級建築士の製図試験において最も大事なこと、それは課題文の指示通りに書く。これに尽きる。

採点官は、提出図面のデザインなどは一切見ない。要求事項との適合性のみが、採点の焦点である。客観的な評価をしなければならないため、あくまでマニュアルに従った試験である。

裏を返せば、課題文さえ満たしていれば合格の図面になる。(もちろん、一般的な建築常識のおさえは必要だが。)

課題文を100%満たす答案を作るために、まず一番に大事なことは、ひたすら問題文を読むことだ。紙に穴が開くまで読み通したいところだが、試験は時間との闘いなので、実際は効率的に読解しなければならない

そこで、ここでは効率的な課題文の読み解き方をレクチャーしたいと思う。

 課題文を読むタイミング

まず、課題文は試験中に合計5回読む。多いと思うかもしれないが、課題文を読むタイミングとその理由を以下に順を追って記していく。

1.試験開始時

マーキングなどはせず、課題文全体を真っ白な頭で読む。情報量の多い課題文を初見の段階でいきなりマーキングを行うことは、情報のヒエラルキーが頭に入りづらくなるため、好ましくない。まずはまっさらな目で見て、この課題文の特徴は何か、いつもの課題とどこが違うのかなど、全体像を把握することが重要な読み漏らしを減らすことにつながる。

2.試験開始時2回目

2回目はマーキングをする。要求諸室のうち面積が適宜指定されている部屋について面積を記していく。この2つの作業をしながら再び読み進める。

マーキングをする前提として、問題文の構成を理解する必要がある。課題文の要求事項は、大きく2つに分けることができる。

  1. プランニングやゾーニング等にかかわるもの
  2. 製図後の書き込みにかかわるもの

1.については、エスキスの中ですべてプランニングに取り込む必要がある。2.については躯体の製図完了後に書き込んでいく必要がある。2.の内容については毎年恒例で記載あるものもあれば、書き方を少し変え、受験者のミスを誘うものもあるので注意が必要である。

マーキングはこの2つの性質分けを基準として、以下の3色に塗り分ける。

  • 赤色 :  建物の間仕切りを構成するまでに必要な情報
  • 緑色:外構にかかわる情報
  • 黄色:要求事項にある什器等の書き込みに関する情報

赤→1、緑→1・2、黄→2の内容に関わる。ここで、赤と緑を分けたのは、建物と外構は、比較的切り離しやすい項目であるため、情報を見やすくすることも考え、色分けしている。

よく面積にマーキングするような指導があるが、特に必要性が見当たらないので、僕は行わなくてよいと思う。

課題文を5回読むといっても、すべての段階で、一字一句を熟読していては、試験時間を大幅にロスしてしまう。そこで重要なのが、「段階に応じて課題文を読む場所を限定する」ということ。この段階での色分けは、課題文を読む際のチェック項目を色分けによって明示することが最も重要な点である。つまり課題文をマーキングによって「チェックリスト」に変えていくのだ。

諸室について関連性が問われる記述があった場合、室同士を赤色マーカーで結ぶ。このように可視化することで、見落としが減るうえに、後のチェックが容易になる。

面積が適宜指定の要求室については、課題文を折り返し、裏面に面積および階の振り分け表を作成する。表の作成の際には、平行定規を用いると作成が速くできる。

課題文に記載がないものの、紙面の端に図面上表現しなければいけない項目を紙面の右下に書き出しておく。例えば、外構の水勾配や防火シャッター、セキュリティ付扉等がそれに当たる。

3.エスキス終了時

諸室の面積、室の関係性等、ゾーニングや動線、要求室の欠落など、重要なミスがないかを課題文を読みながら確認する。(赤色のマーキングをチェック)

4.躯体線の製図が終わった後

課題文を確認しながら室名、及び黄色マーカーの内容を書き込んでいく。また紙面右下に記載したチェック項目の落としがないかを確認。

5.製図完了時

最後に製図が完了した段階で、細かい抜け漏れがないか、総ざらいのチェックを行う。また万が一マーキングしていない箇所で重要な項目がないか、時間が許す限り、課題文の総ざらいを行う。

気づいた人もいるかと思うが、課題文を読むタイミングを追いかけると、試験全体の流れがわかる。製図試験は細かく見落としがちな要求事項が多く、必ずミスが発生する。課題文を適切なタイミングでチェックすることが、手戻りが発生した際に、ダメージを極力最小限にとどめることにつながる。

この課題文の見落とし防止ができず、涙をのむことになる受験生が毎年多くいる。この課題文の抑え方が最も重要といっても過言ではない。何度も読み返し、しっかり頭に刻み込んでいきたい。

エスキスは正しい順序で最小限の手数で

エスキスは手順が命

ここからはエスキスの要点を記していく。

エスキスにおいて重要なことは、

  • 適切な順序でエスキスを行う
  • 余計な作業をしない

この2点だ。

前述したように、製図試験はパズルである。パズルには解き方に順番がある。例えば皆さんがジグゾーパズルをする際、端のほうから作り始めるのではないだろうか。端のほうがピース数が少なく、場所を特定しやすいためだ。

同じ様に製図試験にも紐解く上での正しい手順があり、その手順が身につけば自然とエスキスはうまくなる。

そのためにまず大事なことは、『課題文をチェックリストに変えるマーキング』で述べた、課題文の情報ヒエラルキーが整理できていることだ。ここでいうエスキスは、赤マーカーで記載した要求条件と緑マーカーで記載した要求条件を平面プランに落とし込むことである。

余計な作業をしない

エスキスをする際に、各諸室の関係性をダイアグラムとして整理する人がいる。(何を隠そう、僕も昔は必ずやっていた。)また、プランの下書きを何度も繰り返す人もいる。だが、こういった作業は時間を余計に消費してしまうので基本的には行わない。エスキスの際に行うことは「1/400のシングルラインの図面を仕上げる」以上である。

きちんとした段取りでエスキスを進めていけば、ダイアグラムを書かずとも、すべての情報が整理できるようになる。必ず誰でも出来るようになるので、今後、製図課題に取り組む際には、作業を最小限にとどめる努力をしてほしい。

エスキスの具体的な段取り

ではエスキスの段取りについて、具体的に記していく。大きく分けてエスキスは4つのフェーズに分けることができる。

  • 建物の配置(外壁位置)とスパン割を決める。
  • 大まかなゾーニングを決める。
  • コアの位置を決める
  • 各諸室のレイアウトを行う

建物の配置(外壁位置)とスパン割を決める

最初に行うことは、建物の配置とスパン割を決めることだ。配置とスパン割は、切っても切れない関係にあるため同じフェーズとした。

まず配置計画。建物の配置は多くの場合、緑マーカーの内容と、敷地の情報のみで決定できる。

  1. 敷地情報から道路に接している方位を確認の上、駐車場(緑マーカー)の設置する大体の位置(少なくとも設置する方位程度)を決める。
  2. 広場や駐輪場等(緑マーカー)のおおよその位置を決める。
  3. 1,2で敷地境界から建物外壁までの必要な離隔距離が確定するため、残りの敷地範囲から、最大限確保できるスパン割を確認する。

多くの場合、試験で出題される敷地形状は長編方向が50m前後、短辺方向が35m前後である。道路に面さない側の建物外壁から隣地境界線までの離隔距離を3m、道路に面する側で駐車場等を設置する範囲の離隔距離を5mで設定すると、建物形状は長辺方向が42m前後、短辺方向が28m前後となる。

建物形状を決定するポイントとして、

  1. 南側の間口は広くとる。
  2. 環境がいい方位(公園や川がある方位)は間口を広くとる

これを意識してほしい。1級建築士試験は南側採光至上主義が根強く残っているため、無条件で計画の印象がよくなる。駐車場条件等をクリアしたうえで複数の選択肢がある場合は、これらを意識して外壁ラインを決めること。

次にスパン割。

例えば42mという数字を7m×6スパンとするか、6m×7スパンとするか、スパン割を決める必要があるが、その決定与件は要求所室の必要間口と、要求書式の面積になる。

※ちなみに1級建築士試験で採用するスパン割は、6、7,8mの3通りが主である。これ以上のロングスパンは、梁成が大きくなり、必要用途に対し構造的に不経済と判断されるためだ。

まず必要間口を確認する。例えば長辺方向が東西方向だったとして、日当たりのよい南側に7スパン分の諸室が要求されていた場合、スパン割は6m×7スパン=42mとなる。

間口を確認した上で、次に諸室の要求面積を確認する。諸室面積が40㎡の倍数が多い場合、7×6m(=42㎡)のスパン割が問題を解きやすくなる。50㎡の倍数が多い場合は、7×7m(=49㎡)のスパン割が適用しやすい。

(必ずしも要求面積とスパン割が一致せずとも、課題文を解ききることは可能なので、あくまでそれ以前の外部環境の情報および諸室の必要間口寸法を優先してスパン割を決定する。)

ここまでで、通り芯のあたりが付いた。

ここで建蔽率をチェックする。庇等により増加するであろうクリアランスを考慮し、建築面積が収まっていなければならない。

さらに、課題文チェックの際に行った諸室の階設定において、1階の合計面積が、想定したグリッド内におさまっているか確認する。その際、廊下や便所等の余剰の面積も考慮し、必要諸室の面積の合計に対し、およそ1.4倍とすることで、階面積の想定が可能となる。

ここまでチェックして、すべての条件を満足できれば、あなたの想定した建物の配置計画とグリッド設定は正しいといえる

文章で書くと手数が多いように感じられるが、慣れれば10分程度でここまで出来るようになる。

最後に、エスキスプランニング用にグリッドを用紙に描くが、この際のグリッドは線でなく点で描く、かつ消えないマジックで書くようにします。これが一番早く、かつキレイに描ける。

 

大まかなゾーニングを決める

諸室をプランニングする前に、大まかなゾーニングを決める。「大まか」がどの程度かというと、1階の用途別のまとまりをどのあたりに設置するか、という程度である。ここでの用途別とは、①要求される部門、②管理ゾーンになるが、要求施設が複合用途である場合、①は2つになる。

結論から言うと、ゾーニングの決め手となるのは、

  1. エントランスの位置
  2. 通用口の位置
  3. 必要諸室の採光条件

この3つになる。

1.エントランスの位置

エントランスは原則、配置計画で決めた駐車場の付近に設置する。そして出来るだけ、施設の中央部に設置する。施設中央に設置する理由は、建物内の動線計画を短くするためだ。動線計画が長くなることは必然的に動線が複雑となり、課題条件で必ず謳われる「明快な動線計画」に反する可能性が高いので、原則避けるように心がけてほしい。

2.通用口の位置

通用口の位置もやはり配置計画で定めたサービス用駐車場の直近に設ける。ここで重要なことは、メインエントランスと通用口は別の面に設けるということだ。別の面に設けることで、一般部門と管理部門のゾーニングを分けやすくなり、かつ外部動線・内部動線ともに交錯しづらい計画となる。このように通用口の位置を定めると、必然的に管理ゾーンのおおよその位置が見えてくる。

3.必要諸室の採光条件

要求所室の条件の中で、「明るく開放的な~」という与件があった場合、もしくは「○○に面するように~(○○は敷地外の公園や、敷地内に計画する広場など)」という与件があった場合などは、その室の位置が必然的に決まってくる。すると、その室が属する部門も、当然その室付近に固めなければいけないため、1部門のゾーニングがおおよそ見えてくる。

以上をきちんと組み立てると、おおよその1階のゾーニングは見えてきたのではないだろうか。ここまでの順序を守って進められる方は、製図試験にはそれほど苦労しないものと思う。

 

コアの位置を決める

コアとは、一般的に「直通階段」「エレベーター」「PS」「EPS」「DS」等の階をまたいで設置するものを指す。

1級建築士の試験では、一般的に2つ以上直通階段が必要な建物として課題が想定されるため、階段は2つ以上必要となる。またエレベーターに関しても、利便性とバリアフリーの観点から、一般用と管理用の2つ以上の設置が一般的だ。つまり、階段とエレベーターは一般用と管理用に2か所必要となる。大まかなゾーニングが決まらないとコアの位置が決めれないのはそのためだ。

部門毎での設置に加え、階段の位置決めの際に注意しないといけないのは、避難距離、特に重複距離だ。2階以上の階では居室から階段までの距離が規定されている。階段の位置を設定する際、居室から階段への距離が長すぎると、建築基準法違反となり、不合格の烙印が押されるため注意が必要だ。

逆に言えば、重複距離を満たす位置に階段とエレベーターが計画できていれば、一般利用者の目線でもおおよそ使い勝手の良い位置にコアが計画できてくる。

※避難距離の規定については様々なサイトで詳細があるので、わからない方は調べてみてほしい。

 

各諸室のレイアウトをする

コアの位置が決まると、いよいよ各諸室のプランニングに入る。プランニングは主に赤マーカーした与件をすべて満たし、課題文を平面図に落とし込むことを指す。

プランニングに関しては、用途や課題毎に内容が変わるため、一概にまとめることができないのが正直なところだ。このプランニングに関する情報を取得することが、製図試験受験者の多くが資格学校に通う理由になる。用途毎にゾーニングの肝や、要求所室の面積基準が異なるため、それらの条件を資格学校から提示され、最初の段階でこれらの情報をまとめて学習できるところに、学校の大きな強みがある。(「製図試験は学校に通うべきか、独学で学ぶべきか」参照」)

ただし、毎回出題が変わるからといって、製図が不得意だった人が突然できるようになったり、逆に全然ダメだった人が急にできるようになったりとすることはあまりない。上手な人は毎回出来るし、ダメな人は毎回ダメなものだ。なぜなら、どんな課題でも共通してやるべきことがあるからだ。では、共通点とは何か?

廊下はできるだけ屈折させない。まっすぐ書く。

廊下はまっすぐ描く。これが最も重要だ。1級建築士の試験では、屈曲した廊下は見通しが悪いため安全でなく、利用者にとっても明快でないと判断される。なおかつ屈曲する分、廊下の面積が増えるため、面積効率が悪くなり経済性も悪化させることになる。

各部門のゾーニングはできるだけまとまった形にする

これを意識している人は意外に少ないようにと思う。大体の場合、敷地形状が長方形のため、建物形状も長方形になる。内部でゾーニングする際は、まとまった形の長方形を目指してゾーニングをしていく。これも理由は簡単で、たとえば細長い長方形であったり、凸凹の形であったりすると、同じゾーンでも廊下が長くなる、面積が増えるなど、利便性・経済性が下がるためだ。

間仕切り壁はグリッドに乗せる

壁はできるだけグリッド上に計画する。多くの計画は、ラーメン構造で計画するため、グリッドの交点には柱があり、グリッドの線上には梁がある。壁が梁の上に乗っていることは、構造的な観点や計画的な観点からも合理性が高い。(仮に部屋の真ん中に梁があった場合、設備の天井内配管や、梁型の意匠等にも気を配らなければいけないためだ。)

また東西軸、南北軸のどちらも壁がグリッドから外れる場合、独立柱が室や廊下に出てくる。独立柱は室を利用する際、非常に鬱陶しいため極力避けるべきだ。

大空間は最初にレイアウトをする

要求諸室の中に、「屋内運動場」「吹抜」等の大空間が要求されているときは、これらの室を優先してプランニングをしていく。大空間であるかどうかの判定基準は以下を参考にしてほしい。

  • 面積が大きい(およそ4マス以上のグリッドが必要。)
  • 階をまたぐ。(吹き抜け等)
  • 構造に影響がでる。(ロングスパンのためPC梁を設ける等)

大きい室は計画に与える影響が大きく、主要な空間となるため、一番良い場所を充てるのが一般的だ。また大きい室を意識しないでプランニングを進めていると、終盤に大きい室が納まらない、なんて初歩的なミスにもつながりかねない。

以上、たった4つだけだが、これらを守った上でプランニングができれば、非常にきれいな図面が描けるようになる。そしてこれらの重要事項は、1級建築士の製図試験に限らず、実際の建物をプランニングする上でも基礎となる内容なので、この試験を通じて確実にマスターしておきたい。

長くなったが、エスキスをするにあたっての重要なことを書いてきた。

最後にもう一度、エスキスは順番が大事。必ず上に書いた順番を守りエスキスをすすめてほしい。

このノウハウを取り入れ、初めの1,2回は思うような成果が出ないかもしれないが、おそらく3回目くらいからは、上達が目に見えてくるかと思う。そして確たる方法を繰り返し練習すれば、やり方が体に染みついてきて上達度が速くなる。

 

製図のスピードをあげるテクニック

製図はフリーハンドがおすすめ

ここでは、いよいよ製図についての要点を書いていきたいと思う。製図については、一つの方法にこだわる必要はなく、人によって、早く製図できる方法が異なる場合も大いにあり得る。学校に通っていても、担当の先生によって教わるテクニックもまちまちで、意外と受験生が追及しないことも多い。

それでも、製図のスピードアップにつながる技術は確かにあり、その技術を積み重ねていくことで確実に製図時間の短縮につながる。ここでは筆者が学習し実践してきた「最も効率的に製図が進められた方法」について紹介していく。使えそうなテクニックをそこだけ抜き出し使ってもらっても構わない。学校に通う人も独学で挑む方もここに描く内容を存分に役立ててほしい。
まず大前提として、製図のスピードアップにはフリーハンドでの作図を練習することが一番の近道である。様々な定規を駆使して作図すれば、綺麗な図面を描くことはできるが、道具の持ち替えに時間がかかる。道具の使用を最小限にとどめることが、一番の時間短縮につながる。

また、まっすぐなキレイな線が引けていないと減点の対象とならないか、と心配の声も聞こえてくるが、僕はそうは思わない。(実際の採点基準を知っているわけではないが。)

今、最前線で活躍している1級建築士の中で、手書きですべての図面を描き上げる人は珍しく、CADで作図することがほとんどである。CADは図面を綺麗に仕上げ、図面として必要な客観性を与えてくれる。そんなご時世にあって、建築士に要求される能力はキレイな図面を描くことではなく、情報を吸い上げ、まとめ、適切な形でアウトプットする能力なのである。したがって、図面を定規で描くことより、いかに適切なプランニングができているかが重要な採点項目だと僕は考える。

具体的な作図手順

それではここから、作図手順に沿って、作図の重要な項目を記載していくこととする。

 面積を書く

<使用アイテム:0.5mmドクターグリップ>

一番はじめに面積を書く。試験が終盤になるとどうしても焦りがちになる。面積を最初に書くことは、書き忘れ防止であると同時に、エスキスで決めたプランを製図の段階で変更しないための意識づけでもある。ペンは記述からの流れで、ドクターグリップをそのまま用いるとよい。面積は小数点第1位までの記載なので注意する。

 寸法線を書く

<使用アイテム:0.3mmロットリング>

ここから、製図ペンに持ち替える。

図面にはまず寸法線を描く。寸法線を先に描くことで、紙面全体のレイアウトを決めることができ、後々に寸法線と図面が重なってしまうことなどを未然に防止する。

寸法線を描く際に、通り芯を書くことを指導している人がいるが、時間がもったいない上に、紙面上に余計な線が増えるため通り芯は描くべきではない。寸法線がしっかり描けていれば、これをガイドにして柱を描くことが可能である。

 柱を書く

<使用アイテム:0.9mmロットリング>

柱はテンプレートと三角定規が一体となった「バンコ三角スケール」を使用すると最も速く描ける。このとき平行定規を使い、三角スケールを平行に動かしていきながら柱を書いていく。

柱をスピーディに書くコツは、四角を描くと意識せず、むしろテンプレートからはみ出す勢いで、グルグルと丸を2周描くことである。テンプレートがあるため自然と正方形になるし、筆圧も上がり、きれいな柱が格段に速く書ける。シャーペンは柱のみ0.9mmのものを使うことで、図面にメリハリがでるため、ここは労を惜しまず持ち替えることをお勧めする。

 コアを書く

<使用アイテム:0.7mmロットリング>

柱を描けたら、壁や建具を書く前に各階のコアを先に描く。ここから先建物の躯体関係はすべて0.7mmのシャーペンで行う。何もない状態で縦系統を描いたほうが、階段やエレベーターの位置が鮮明にわかるため、失格事項である縦系統の位置ズレを未然に防げる。階段の位置がズレて不合格、なんて痛い思いをしないで済む。(涙)

階段等を書き始めると、細かい線がどうしても増えていく。僕は基本的にフリーハンドで作図していたが、縦方向に引く線に比べ、横方向はどうしてもブレがちであまりきれいに描けなかった。

そこで、自己流で、横方向の線のみ定規(ヘキサスケール)を用いて作図していた。縦方向の線はフリーハンドとすることで、定規を90度回転させず、平行移動だけで線が引けるため、すべて定規で線を引くのに比べ、各段に製図がスピードアップする。是非、試してほしい。

 壁・サッシ・建具を書く

<使用アイテム:0.7mmロットリング>

いよいよ壁と建具を描いていく。

壁を書く際に、最も手間がかかるのは、線を「包絡」させる必要がある場合である。「包絡」というのは、異なる角度で交わる壁の交点を交錯させずにつなげることである。壁同士がつながる箇所を、エスキス用紙を見て確認し、線を2~3mm程度途切れさせ、その場所に直行する壁をつなげる。図面上の印象は確かによくなるが、その分手間もかかる。そこで図面の質を維持したまま時間を短縮するために、建物のつくりをしっかりと理解した上で包絡する壁を限定する。

ルールとはずばり、「同素材の壁同士は包絡し、異種素材の壁同士は包絡させない。」ことである。

具体的に説明していく。まず、多くの受験生は構造架構形式として鉄筋コンクリートラーメン構造を選択するものと思われる。ラーメン構造は基本的に柱と梁からなる架構のため、壁と柱は異種素材と考えて差し支えない(例:壁→ALC版、柱→鉄筋コンクリート)。したがって柱と外壁は包絡させない。続いて内壁と外壁はどうか。外壁はALC版や押出成形セメント板等、対候性・耐久性の高い素材を使うのが一般的である。一方、内壁で最も多く使われるのは石膏ボードである。したがって外壁と内壁も性能の異なる異種素材のため、壁は包絡させない方が自然である。結果、壁を包絡させるのは内壁同士のみとなる。どうだろうか、柱と壁は分けて書いていた人でも、外壁と内壁は包絡させていた人が多いのではないだろうか。

この外壁の包絡作業を省略するだけで、作図時間がかなり短縮できる。なぜなら、外壁のみ先行して、線を引ききることができるからである。包絡を意識すると、どうしても内壁の位置の確認が必要となり多くの時間を要する。しかし外壁が独立して描ければ、平行定規を使い、スビーディーに、かつ正確に線が引ける。是非この方法を身に着けてほしい。

次に建具を描いていく。建具には大きく分けて、サッシと扉の2種類ある。

扉の書き方については、

  • 壁を書く際に、扉位置にあたりをつけ、あらかじめ壁を切り描いておく。
  • 壁をすべて書ききった上で、扉の位置の壁のラインを消す。

この2パターンがあるかと思うが、正直、速さの違いは僕は感じなかった。ここは皆さんがよかれと思う方法で取り組んでいただいてよいと思う。時間がかかる項目なので、何か良案がある人はぜひ教えてほしい。

一方でサッシについては、簡単な省略方法がある。それは「見えがかりの線を書かない」ことである。多くの学校での教えや、模範解答はキレイな図面を提供するため、サッシに見えがかりの線を記入する。それ故、先入観としてサッシはこう書くべき、と思っている人が多いが決してそんなことはない。掃き出し窓であればそもそも書く必要がない。また、一般的に扉には厚さ等の詳細を記入しない。サッシだけ余計な情報を書く必要はまったくない。

ただし、見えがかり線を記入すると図面が美しいことは確かである。そこで、サッシは段階的に描くことにする。最初の段階では、方立とガラスのみを記入し、最後の書き込みの段階で見えがかり線を描く。こうすることで、作図スピードもあがるし、間に合う人はキレイな図面を書くこともできる。作図には優先順位をつけて臨むことが重要だ。

 室名・室面積・黄色マーカーの内容を書く

<使用アイテム:0.3mmロットリング>

ここまでできると、建物が概ね描けたことになる。ここからは書き込みとなるため、ペンを細いペンに持ち替える。0.5㎜の芯としてもいいが、0.3mmのほうがよりメリハリが強調されるのでおすすめである。ただ芯が折れやすいので筆圧には注意が必要。

書き込みはまず、採点に影響がある「室名」「室面積」「黄色マーカーの内容」について行っていく。なぜこれらの項目をまとめて書くかというと、課題文を見ながらでないと書けないからである。つまりここが『課題文をチェックリストに変えるマーキング』で書いた4回目のチェックポイントである。どんなに頭のいい人でも、課題文の内容をすべて漏れなく覚えておくことは難しい。ここで課題文をしっかり見ながら、書き込んだ情報にチェックをいれながら進めていくことで、書き漏らしがグッと減る。

この時、問題文をすべて読み返していては時間がもったいないので、冒頭のマーキングで、書き込み項目をきっちり選別し黄色にマーキングできているかが、勝負の分かれ目になる。

また室名や室面積については、書き込みが多い部屋はレイアウトにも注意が必要となる。室名を部屋の真ん中に描いたら、指定されていた机4台が並ばなくない、なんてこともわりとよく経験することである。したがって室名だけ先にすべて描く、ということではなく1部屋ずつ、すべての項目を埋めていくのがよいだろう。

什器・備品等の書き込みについては基本的にフリーハンドですべて行う。テンプレートを使っていては、いちいち時間がかかるし、フリーハンドのほうが味があって印象の良い図面となりやすい。

他の図面を書く

<使用アイテム:0.7mmロットリング>

6まで出来ると、平面図は外構以外ほぼすべて完了していると考えてよい。平面図以外の作図項目は、断面図、梁伏図、矩計図など、年度によってさまざまだが、平面図が完了した時点で描くのが最も時間を効率化できる。ただし、作図スピードに自信がない人は断面図等を、一つ前のフェーズで描くことも考えられる。

緑マーカーの内容を描く

<使用アイテム:0.7mmロットリング>

おそらく、駐車場、駐輪場、植栽、広場等の項目になるが、断面図等を書き終えた段階で描く。作図量自体は多くない項目なので、描く内容をエスキスの時点でしっかり決めていれば、時間をかけずにクリアできるだろう。

マーカーしていない描き込みをする

<使用アイテム:0.3mmロットリング>

時間に余裕がある人は、ぜひ書き込みを増やし、図面の精度を上げるとよい。図面のきれいさや完成度も評価対象にはなっているだろう。

ここでいう書き込みとは例えば、樹木、舗装目地、デッキの表現、要求されていない家具、5で描いたサッシの見えがかり線などである。特に、樹木や舗装などは記載することでグッと図面の印象が良くなるので、ぜひここまでやりきっていただきたい。ただし、書き込みに夢中になりすぎて最後の見直しの時間がなくならないように注意すること。

全体を通して書き漏れ、書き間違えを見直す。

<使用アイテム:課題文>

最後にもう一度課題文を読み直す。しかし、ここで大きな間違いを見つけたところで、修正はもはやできないので、ここでの確認項目は以下の点である。

  • ・黄色マーカーした箇所の書き漏れがないか。
  • ・緑マーカーした箇所の書き漏れがないか。
  • ・そもそもマーカーしそびれている書き込み項目がないか。

 

まとめ

ここまで、確認して自信をもって書ききったといえるのであれば、間違いないく合格に近い図面が描けると思う。

作図の流れと、細かいテクニックを書き連ねてきたが、どうだったであろうか。思うような結果がこれまで出ていない人は、是非このページに記載したやりかたを取り入れ、作図に努めてほしい。多くの人が結果を残せることを期待している。

1級建築士試験の製図試験、試験が1年に一度しかないものだから、落ちるとまた一年間勉強を重ねなければならない。資格がないことが仕事に影響出る人もいる。

でも結局は、この資格試験は通過点でしかなく、建築家の良しあしを決めることもできなければ、今後の人生を煌びやかにすることも少ない。

試験を過大評価しすぎず、無駄なく効率的に通過できるよう、この記事を役立ててもらえたら幸いだ。

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Filed Under: 雑記

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円

大手設計事務所勤務の建築家 / 爬虫類ブリーダー / 家族肖像画家 / 2児の父

仕事に子育てに多忙を極める中、人生を少しでも楽しむための情報を発信中。

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