福岡伸一氏の『動的平衡』。
素人の僕にも、生物学のおもしろさ、奥深さ、ロマンが存分に伝わってくる名作中の名作であった。
一貫して「生命の定義とは何か?」という問いかけに対する回答を模索しているのだが、歴史から紐解き最新の科学まで、まるで物語を紡ぐようなそのアプローチは、単純に物語としても抜群におもしろい。それでいて、「生命とはどういうものか?」という回答には個人的に100点満点で納得した。
作中、特にグッときた文面を紹介する。
『動的平衡』本文からの引用
すべての生体分子は常に「合成」と「分解」の流れの中にあり、どんなに特別な分子であっても、遅かれ早かれ「分解」と「更新」の対象となることを免れない
タンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針なのである。そしてもう一つの厳然たる事実は、私たちの新陳代謝速度が加齢とともに確実に遅くなるということである。 ~中略~ つまり、歳をとると一年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。
自然界のインプットとアウトプットの関係は多くの場合、Sの字を左右に引き伸ばしたような、シグモイド・カーブという非線形をとるのである。
生命は、機械のようにいくつもの部品を組み立てただけで成り立っているわけではないという厳然たる事実がある。「生命の仕組み」と「機械のメカニズム」の違いを読み解く一つのカギは時間だろう。基本的に、機械の組み立て方において、時間の順序は関係しない。
つまり生命とは機械ではない。 ~中略~ 生命の持つ柔らかさ、可変性、そして全体としてのバランスを保つ機能-それを、私は動的平衡と呼びたいのである。
まとめ
上記の引用にはいくつかの特に感銘を受けた個所はあえて記載していない。興味をそそられるサイドストーリーもまだまだある。だが、それでも有り余るくらいの面白さを感じていただけたのではないだろうか。
特に終盤のエントロピー増大の法則とベルクソンの孤から成る、生命モデルの説明については、読んでいてドキドキしてくるくらいだった。
生命とはロマンそのものであった。そう感じてならない。
少しでも気になった人は、是非とも生命の定義を探る冒険へと足を踏み出してほしい。
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