落水荘の概要
フランク・ロイド・ライトによる落水荘は、自然との融和を最も上手に成し遂げた住宅といっても良い。
- 設計者 :フランク・ロイド・ライト
- 建設年 :1935年
- 用途 :住宅(エドガー・カウフマン邸)
- 構造 :鉄筋コンクリート造
- 階数 :地上3階地下1階
場所はずいぶんと僻地にある。
滝の上に家が浮いている。
このあまりにも有名な住宅のワンショットは、きっと初めて見る建築学生なんかを虜にするものであろう。実際には滝の上に大きなキャンティボリュームがかかることで浮いているように見える。
落水荘は影の建築
ライトは「有機的な建築」を目指していたことで有名だが、その作品は、自然的な造形そのものをつくるのではなく、幾何学的な造形を自然と融合させるところに特徴がある。
僕は、落水荘は「影の建築」ではないかと感じた。堀の深いボリュームが2つとキャノピーが複数枚、各方向に飛び出して豊かな陰影を創り出している。影は、建物自身に落ちるものと、水辺に落ちるものがあり、その輪郭は、幾何学的な直線と有機的な線が混ざり合う。人工物と自然の境目が、影の中で曖昧となり、調和が図られており、美しさを感じる。
素材と3つの抽象化
反対側にまわるとアプローチ動線やテラスが見えてくる。素材は抽象的なボリュームと石張りのコア部分の2種類が大きく見えてくる。
自然の岩肌 → 石張りの壁 → 抽象的なボリューム
というように、全体の調和をグラデーショナルな素材の使い方で表現している。
1階につながる階段は水盤に“着水”しており、水の上の建築という点がより強調されている。
水盤に着水する階段は吊階段になっており、水の上で浮遊する様子がよく伝わってくる。Rのついた抽象的な断板と石張りの壁のコントラストは落水荘そのもののミニチュア版のようにも感じる。
この階段、揺れが一層の浮遊感を感じさせる、いい演出をしていそうである。
どこでも外を感じることのできる平面計画
キャンティで突き出たボリュームはテラスになっている。手すりとスラブが一体となって塊感を演出している。塊間を出すことで、地面の岩とスケールが揃い調和がとれている。
正直ここまで贅沢にテラスが必要なのか、という気もするが、各階にテラスが散りばめられ、リビングからも出られる、寝室からも出られる、ギャラリーからも出られる、と、つまりどこにいてもテラスに出られる。どこにいてもすぐに滝の音を聞くことができて、水の気配を感じることができる。すなわち自然と建築が融合しているのである。
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