卵詰まりという経験
我が家のヒョウモントカゲモドキが卵詰まりを起こした。
結論から書くと、卵詰まりを起こした子を救うことは出来なかった。亡くなった子は、チャコールアフガンのかなり気に入っていた子で、助けることができず、悔恨の念が堪えない…。
卵詰まりは、繁殖により新たな命を期待している状況が一変し、母の命が危ぶまれ、天国から地獄へと落とされる非常に嫌な経験であった。
今後、このような事が2度と起きないように、そして万が一起こってしまった場合に、次こそは命を救うことができるよう、今回学んだことをここに備忘録として残したいと思う。
また、もし同じ問題に直面した方が、この記事を参考に大事な命を救うことができたなら、幸いである。
卵詰まりが起きないために -予防-
卵詰まりが起こってから、それはもういろいろなところから情報を集めた。
まずは卵詰まりが起こらないために何をするべきなのか。当たり前のことから、確証はないがおそらく実行すべきと判断したことまで記載していく。
- 交配に相応しい固体かどうかを適切に判断する。今回卵詰まりを起こした子は、おそらく生後1年~2年であった。体重は交配時で約60g。海外の有名ブリーダーは体重が50gを超えていたら繁殖可能と判断できる、と発言していたのを聞いていたこともあり、問題ないと考えていた。が、病院では「明言できないが、ひょっとすると繁殖には早すぎたのかもしれません。」と言われた。生後1年では成熟しきっていない、という可能性もあるとのことであった。
- 「肥満の個体ほど繁殖を失敗するように思う」という旨の発言をツイッターで見かける。根拠が明確な訳ではないが、自然の摂理から十分信憑性のある話かと思う。うちの子は、わきぷになどはなく、極端な肥満ではなかったが、大食いではあったため、もしかすると若干の肥満傾向にあったのかもしれない。
- 十分な栄養、特にカルシウムをセットする。あたり前のことである。特に、カルシウムはケージ内に固めて置いておくのがよい。不足は個体が舐めて摂取してくれ、卵の状態がよくなるという意見もある。
- ストレスを与えない。これも一般的な話である。覗きすぎ、ハンドリングのし過ぎは要注意である。
- 適切な産卵床を用意する。うちの卵が詰まった子はファーストクラッチでは産卵床に産んでいたので、気に入らなかったということではないと思うが、産卵床が気に入らず卵が出せないという可能性もあるとのこと。
- 適切な温度帯をつくる。ヒョウモントカゲモドキは冬に発情し交尾をし、暖かくなってくる春先に産卵をする。十分な温度が確保できていないと体が産卵する方向に向かわない。逆に温度を上げることで代謝が活性化し産むこともあるようである。
温室のつくり方については下記に詳しい記事を挙げているので是非参照してほしい
【ヒョウモントカゲモドキ】DIYで爬虫類飼育に最適な温室環境をつくる【レオパ】
卵詰まりが起きた時の対処
どのような状況になったら卵詰まりと判断するか
- ヒョウモントカゲモドキの抱卵期間は比較的ばらつきがあり、2週間から2カ月程度とのこと。セカンドクラッチ以降は2週間程度で産むことが多いとのこと。これを著しく超えるようであれば卵詰まりを起こしている可能性がある。
- ヒョウモントカゲモドキは産卵直前になると餌を食べなくなる。つまり餌を食べなくなると産卵の合図である。餌を食べなくなってからなかなか産卵しない場合、体内で何らかの異常が起こっていると考えてよい。僕がかかった病院では、カメを判断基準にして、餌を食べなくなってから4週間までは様子見としてよいと考えているとのこと。ただし、明らかな異常が見られない場合について、だが。
次に卵詰まりが起きた時にするべき対処のうち病院にかからずともできるもの
- ケージ温度を上げる。体内の代謝を活性化させるためである。温浴をさせて卵がでたという事例も聞いたが、温浴はストレスのかからない範囲でやることをお勧めする。
- カルシウムを摂取させる。爬虫類は筋肉を動かすためにカルシウムを必要としているらしい。だが抱卵している雌は、卵をつくるためにカルシウムを使い切ってしまい、筋収縮をするためのカルシウムが不足している可能性があるとのこと。
- マッサージをする。特にイキんでいる状態の雌の下腹部を卵を、排出する方向にマッサージすることで、産卵に成功した例をいくつか聞いた。
自身ではどうすることもできなくなった時に動物病院でする対処
僕が行った病院で聞いた卵詰まりで施す主な処置は全部で3つ。
- カルシウム剤の注射。餌を食べなくなってから4週間まではカルシウム剤の投与以上はしないとのこと。カルシウム剤は卵の形成不全の助けと、上述した親の個体の筋収縮を助けるために行う。
- オキシトシン(排卵誘発剤)の注射。人間の陣痛誘発材としても使用されるホルモン剤である。強制的に筋収縮を促し排卵させる。母体のリスクがかなり高いらしく、最悪死に至ることもあるとのことで、病院ではまったくお勧めされなかった。そもそも爬虫類にはオキシトシンはあまり効かないという話もよく聞く。だがオキシトシンの注射で無事排卵できたという例も聞く。
- 手術。最後の手段。打つ手がなくなった時に腹を切って卵をだす。まず、卵を出す際には卵管も出す必要があり、命が助かっても翌年以降の繁殖はできなくなる。また爬虫類の手術は8割が失敗する、という噂もあるらしく、麻酔から開腹まで様々な危険が多い。卵詰まりの子は衰弱していることも多くさらにリスクが高まる。
その他、レアケースとしては卵殻が形成されていない場合は、卵胞を吸収させてしまうホルモン剤などもあるとのこと。
ちなみに、ショップのマスターに聞いた話では、蛇は体内であえて卵を潰してしまって、消化させ排出させる方法があるという。
また、他のショップのマスターは手術は腹を切らずとも、卵管よりはさみを入れて、卵を引っ張り出す方法もあるとのこと。そのような対応をしている病院は聞いたことがないので、情報があればぜひコメント欄にて教えてほしい。
、卵詰まりで最悪のケースは、体内で卵がつぶれ、卵管などの体内で炎症をおこしはじめるケースである。そうなると内臓疾患などにつながり命の危険につながる。
なぜ卵詰まりの子を助けることができなかったか
卵詰まりをおこした子は、ファーストクラッチで卵が一つ体に残ってしまい、そのままセカンドクラッチにの卵を宿してしまった。しかし、体内に残った卵は体に吸収され、問題のない状態となった。
ところが、セカンドクラッチも生むことができず、再び通院。カルシウム剤を注射しなんとか一つを出産。またしてももう一つが体に残ってしまうことに。1つ卵を出産したことで、新たな卵胞を形成し始め、体の中には3つの卵がある状態に。さらにエコー写真を撮ったところ、残った一つの卵は潰れている可能性があるとのこと。最悪の事態である。卵が3つある状態は当然のことながら不自然で、体にもかなりの負担がかかるとのこと。
この時点で、取り得る最善の手段として手術を勧められる。しかし、この時点で体重は45gまで落ちていた。上述したリスク、デメリットを考えると手術が最善の手段とはどうしても思えず、僕には英断できなかった。
運よく体内にある卵が無精卵であれば、ファーストクラッチのときの様に卵が体に吸収され、通常のサイクルに戻る可能性もあった。
炎症が起きていた時のために抗生剤を飲みながら、事態が好転するのを待っていた。薬投与から1週間後、強制給餌でわずかにあげていた餌が正常な糞として排出されているのを確認。それから3日程度、多少嫌がるものの流動食も食べ、消化器官も正常である。卵も心なしか小さくなっているようで、順調と思われた。
が、その2日後事態は急変、かなりぐったりとした様子となり、触っても反応が鈍くなる。その翌日に、ゆっくりと硬くなりながら静かに息を引き取った。
卵が悪さをしていたのは明らかだが、直接的な死因は不明。
生き物が死ぬときに感じる無力感は、いつも辛い。助けてあげられなくてごめんなさい。せめて安らかに。そしてこの経験を無駄にしてはいけない。
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