人間は自身の姿を神に重ねるくらい高い自尊心を持った生命体だが、地球で最も支配的な生物は本当に人間なのだろうか。
本書では、知性を問題を解決する能力として捉えた際、植物は実は随分に知性的であることが、客観的に描かれている。
本書の結論である、人間は植物の知性を知性として認識できていないということに、大きな気付きと驚きを与えられる。いずれ人類が未知の生命と遭遇した時に、人間はその知性をそもそも認識ができるのであろうか。同じように、実は身近に存在する植物が知性を持っていたとしても、ただ認識できていないだけで、実は人間は植物に知らぬうちに支配されているのかもしれない。
事実、地球の生命体のうち、99%は植物で、人間が占める割合は0.3%に過ぎない。
なかなか衝撃的な事実である。
『植物は<知性>をもっている』からの抜粋
以下に勉強となった箇所を備忘録として記録していく。(一部、読みやすいように文章を省略しながら記載している)
- 動物の単細胞生物と植物の単細胞生物を具体的に比較、代表としてとりあげるのはゾウリムシとミドリムシ ~(中略)~じつは、ミドリムシにはゾウリムシにない能力があり、光合成を行う能力だ。
- 植物の体はモジュール構造になっていて、どのパーツも重要ではあるものの、どれも絶対に必要不可欠というわけではない。動物は、脳、肺、胃など少数の器官に、もっとも重要な生命機能のほとんどすべてを集中させるといった進化を遂げてきた。
- 植物の個体は、無数の同じモジュールの組み合わせでできている。樹木やサボテン、一つの株からか生えた草の茂みなどは、人間やほかの動物にたとえるよりも、コロニーのようなものだと考えたほうがいい。
- 私たちが摂取するカロリーの大部分を担っている植物はおもに六種類だ。サトウキビ、トウモロコシ、米、小麦、ジャガイモ、大豆、
- 植物をそばに置いておくことで、ストレスの軽減、注意力の増大、病気からの早い回復といった効果があることがわかったのだ。窓から緑の見える部屋の学生は明らかにいい結果が出たのに対し、建物しか見えない学生の結果は満足のいくものではなかった。大学生よりも小学生の方で注意力の向上がはっきり見られた。
- 葉は光の方向に向かって成長していこうとする。光を求めるこの性質は、「正の屈光性」と呼ばれる。ところが根は、葉と正反対の振る舞いをする。~中略~どんな光からも急いで遠ざかろうとする。これは「負の屈光性」と呼ばれる
- 植物は「におい」によって、~中略~周囲の環境から情報を得たり、植物どうしや昆虫とのコミュニケーションをはかったりしているのだ。
- とくに低周波が、種子の発芽、植物の成長、根の伸長にいい影響を与える。逆に高周波には成長を抑える効果がある。
- 植物は、人間と非常によく似た五感をそなえている。植物は人間よりもずっと敏感なのだ。人間のもっていない「感覚」を、少なくとも十五はもっているのだから!たとえば、植物は湿度計のようなものを供えていて、かなり遠くにある水源も感知できる。たとえば、重力を感知する能力や、磁場を感知する能力、空気中や地中にふくまれている化学物質を感知し、測定する能力もある。
- モジュール構造でできている植物には無数の「情報センター」があり、それぞれが異なるタイプの信号を制御することができる。たとえば人間は、足から手へ、または足から手へ、または足から口へとメッセージを送ることはできない。植物の場合は、根から葉に、葉から根に信号を送ることができるだけでなく、一本の根からべつの根に、一枚の葉からべつの葉に直接信号を送ることもできる。植物の地勢は、まさに分散型システムなのだ。
- 植物は、ほかの植物とだけでなく、いわゆる「根圏」の生物すべてともコミュニケーションをとることができるらしい。「根圏」とは、根が触れている土壌のはんいのことで、そこに生息する数多くの生物も根圏にふくまれる。
- 地球上のバイオマス(つまり、生物の総重量)のうち、多細胞生物の99.7%は、人間ではなく植物が占めている。人類とすべての動物を合わせてもわずか0.3%にすぎない。
- 分散知能のもとでは、生物の各個体が集まって群れを作るとき、個体そのものには存在しない性質が全体として現れる(「創発」という)。
- 動物の場合は、人間、哺乳類、昆虫、鳥などの個体が多数集まることで群れが形成される。けれども植物の場合、創発行動は、植物の一個体だけでも起こりうる。ようするに植物の個体一つひとつが、一つの群れ(コロニー)なのだ!
- はたして私たち―コミュニケーションうんぬん以前に―エイリアンの地勢を認識できるのだろうか?人間は、自分と異なるタイプの知性を認識することはできないため、エイリアンの知性を探しているつもりが、いつのまにか、宇宙のどこかにまるで自分たち自身のような知性を延々と探し求めてしまっているのではないだろうか。
まとめと感想
多くのサイドストーリーや根拠となる話を以て論が展開され、それがまた有益なもんで、抜粋文も随分と多くなってしまった。
前後の文脈がないと意味が不明な文もあるだろう。植物に関する実態を、端的に、また驚きを以て知りたいという人には、是非おすすめの一冊。
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