福岡伸一氏の『動的平衡』。
素人の僕にも、生物学のおもしろさ、奥深さ、ロマンが存分に伝わってくる名作中の名作であった。
一貫して「生命の定義とは何か?」という問いかけに対する回答を模索しているのだが、歴史から紐解き最新の科学まで、まるで物語を紡ぐようなそのアプローチは、単純に物語としても抜群におもしろい。それでいて、「生命とはどういうものか?」という回答には個人的に100点満点で納得した。
作中、特にグッときた文面を紹介する。
『動的平衡』本文からの引用
すべての生体分子は常に「合成」と「分解」の流れの中にあり、どんなに特別な分子であっても、遅かれ早かれ「分解」と「更新」の対象となることを免れない
タンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針なのである。そしてもう一つの厳然たる事実は、私たちの新陳代謝速度が加齢とともに確実に遅くなるということである。 ~中略~ つまり、歳をとると一年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。